かつての想い人の思い出など。
彼は猫を飼っていた。
彼は私を愛して、愛さなかった。
彼は私を受け入れ、受け入れなかった。
彼はモダンアートが好きだった。
彼は、誰のことも、愛さなかった。
19年もの想いは、最早恋愛ではなく、固執です。
それを、私は分かっていなくて、彼はきっと分かっていた。
だから、どれだけ近くにいても、一線を引いて、私が自分から離れるまで、時間をたっぷりくれた。
形にしていたら、綺麗な思い出にはなり得なかったでしょう。
男女の関係に於いて、綺麗な思い出に昇華することなど、ほとんどありえません。
エネルギーと時間を使って、彼は、綺麗な思い出に、してくれました。
最後まで、好きで。
固執から離れた後も、好きでいさせてくれた。
終わりにしたいのなら
5秒だけください
目を閉じて深呼吸
その間に忘れてあげるわ
2人きり、同じ部屋で。
彼の大きな背中を見つめながらそう思って。
5秒以上の時間をくれたけれど、忘れてあげることはできませんでした。
昔も今もこれからも。
街でブルガリブラックの香りがすれば、私は振り向いてしまう。
いるはずもない人を探して。
でも、全ては過去のこと。
綺麗な思い出を胸に、生きていけます。
道を作ってくれて、ありがとう。
歩き出します、さようなら。
たとえ、今後もう、恋愛ができなくてもいい。
それだけ、それだけ大きな存在でした。
幸せに、なってください。
いつかまた、会える日まで。