原罪の灯

ここに証そう お前の名を ご覧 あれが生命なる灯

砂の城

家を出る準備が、少しずつ整いつつあります。

間も無く、此処から自分が消えることを、まだ実感できていません。

これから徐々に実感するのか、最後の日に纏めて実感するのか。

どちらにせよ、辛さを伴う選択を、私はしました。

 

思えば長い間、私は、砂の城をずっと、ずっと作り続けてきました。

寄せては返す波打ち際に、繰り返し、繰り返し。

 

仲の良い家族。

固い絆で結ばれた家族。

3人で幸せになる未来。

 

当てのない夢を描いて。

その度に、波に攫われた砂の城

浜辺から離れた場所に、砂ではない城を築くことのできなかったのが、私の弱さであり、限界でした。

 

砂の城を打ち砕くのは、自分であり、家族であり、また、その自分や家族は、現在進行形ではなく、過去の記憶という亡霊だったことのほうが多かったかもしれません。

 

無駄だとわかっていても、唇を噛み締めて、築いては消え、呆然として。

その繰り返しに、疲れ果ててしまいました。

 

一人になったら、私はもう、砂の城など築くことはないでしょう。

現実はどこまで行っても現実であり、意味などない、まして理想など。

 

砂の城を築かなくなった私は、楽になるのだろうか。

ならないような、気がします。

城を築かない代わりに、失ったものに思いを馳せ、打ち砕いた未来に焦がれるのでしょう。

 

願いは、口にしません。

自分の足で、振り返らずに一本道を歩く。

大袈裟なようですが、それが私の矜持です。

 

遠くを睨んで、奥歯噛み締め。

蜘蛛の糸には、縋らない。

 

孤高と言われた人間の孤独さなんて、誰にも分からないし、分かってほしくもないから。

 

But please, please let's use this chance to turn things around.