小さい頃から、それこそハリーポッターが世に出る前から、魔法使いになりたい、とずっと願っていました。
魔法が使えたら、この苦境から逃げ出せる、そう思って、小さな手で地面に変な記号や形を書いていました。
魔法は、使えないまま、苦しみも、消せないまま。
ここ数年、気づいたことがあります。
私の杖は、希望を叶える杖ではなく、呪いの杖だったのだと。
幸せになれない呪い。
生き地獄の呪い。
痩せていなくてはいけない呪い。
どんなに苦しくても、死ぬことのできない呪い。
私は、使えていました。
魔法ではなく、自らを呪縛する、呪いを。
38歳、大人になった私は、杖を折ることにしました。
もう、解放されていいのだ、と。
幸せになってもいい、ならなくてもいい。
痩せていてもいい、いなくてもいい。
死んでもいい、生きていてもいい。
呪いの魔術は、何となく、家族との軋轢だったような気が薄らとしますが、それは然して問題ではない。
簡単なことではありません。
何十年も心身を縛ってきた呪いは、そう簡単には解けないでしょう。
でも、もう、自分に呪いをかけるのはやめます。
精神的な鳥籠から飛び出して、羽ばたく準備です。
鳥籠の中は、不幸ではあったけれど、同時に守られてもいた。
飛び立った先が、幸せいっぱいと考えるほど甘くはありません。
羽は折れ、傷ついて、立ち直れないかもしれない。
それでも、籠の中から外を眺めているより、「生きている」と思います。
私が捨てるのは、家、家庭、家族という、鳥籠です。
帰る場所は、用意されていても私は要らない。
羽を伸ばして、動かして、飛び立つ準備をしています。
呪いの杖だったけれど、ずっと私と一緒にいてくれた。
さようなら、呪われた人生。