原罪の灯

ここに証そう お前の名を ご覧 あれが生命なる灯

「白」の幅と、その凄み

先日、生誕140年のモーリス•ユトリロ展に行ってきました。

 

ユトリロは有名なので、「アル中の天才」「白の時代」「閉ざされた扉」などのワードは知っていましたが、まとめてじっくり作品を見たのは初めてです。

 

赤、や青、を象徴する画家は何人か思い付きますが、白を謳う画家は、寡聞にしてそう何人も知りませんでした。

 

ユトリロの白を見た感想は、ありきたりですが、白でこんなに奥行きを出せるものなのか…と。

 

極端な話、キャンバスに何も描かずに、「これが白だ」と言ってしまえば、それまでなのですが。

 

ユトリロは、油絵具に、漆喰や貝殻などを混ぜて、白の表現を追求したそうです。

確かに、そうすることによって、白という色の幅を表現していたように思います。

 

彼の生い立ちや人生からの邪推ですが、自分の中の白の、悲しい深みを出していたのではないか、と思いました。

閉ざされた扉も、然り。

 

白の時代の後の、色彩に満ちた作品も素晴らしかったけれど、私はとにかく、暗い絵が好きなので、白の時代の作品を多く見られて嬉しかったです。

 

白の時代の作品には、幅と共に、一種の凄みのようなものが感じられました。

 

白、といっても、ただ白いだけではなく…これまた邪推かもしれませんが、心の悲鳴が聞こえてくるような作品が多かったです。

 

そして、白主体でありながら、淡い色が差し込まれていて。

 

白を前面に押し出せるのは、それこそ天才なのだと思いますが、その一方で、緑の使い方に感嘆させられました。

特別な色でない色を、1枚のキャンバスに描き込む…

 

とても素敵な作品ばかりで、その画風に触れられた、よい経験となりました。