原罪の灯

ここに証そう お前の名を ご覧 あれが生命なる灯

割れた窓

日々が、ゆっくりと、それでいて特急列車に乗っているかのように過ぎていきます。

 

極端な性格なので、生ゴミは即時に封をし、ゴミは溜めず、掃除機を1日1回プラス気になった時にかけ、虫は勿論、髪の毛一本落ちていない部屋を心がけています。

 

食器は、2つずつくらいが、ちょうど良い。

なければ、洗うから。

 

私だって、バーで飲んでいる日以外は、バーで飲んでいないわけで、最近はオムレツのアレンジに凝っています。

電子レンジで作れるオムレツ。

具材のバリエーションは、たくさんあります。

モッツァレラのシュレッドチーズは外せないけれど、その時の気分で、マッシュルームだったり、ほぐしたタラコだったり、ズッキーニや茄子をダイスカットした物だったり、挽肉とハーブだったり。

トマトを入れる、も考えましたが、何にせよ、ケチャップをかけてしまうので、トマトは今のところ、試していません。

トマトから水分が出てしまうし。

 

欲張りに具材を詰め込むので、出来上がりの見た目は美しくはないけれど、人様にお出しするわけではないのだから、何ら問題はない。

 

生野菜たっぷり(レタス、トマト、ピクルス、キノコのマリネなど)のプレートに、出来立てのオムレツを滑り込ませて、オムレツを作っている間に作ったスープ(昨日はクラムチャウダー)、温めたパンを少し。

 

あたかも、充実した日々の暮らし。

きちんと、暮らしている、フリ。

 

あなたとは違うんです、と。

突きつけてやりたい、過去の自分に。

悲しい表情で、片側の口角で、無理やり笑って。

 

夢の色、ゆらり、濃くなるーーーーー

 

割れた窓は、業者を呼べば、元通りになります。

でも、心の窓が割れたら、それは、もう直らない。

心の窓には、薬や時間という業者を入れても、元通りには、ならない。

 

一人に慣れてしまったら、きっともう、実家の家族と生活することはできない、気がしています。

 

私の自立(自立ではなく、逃げてきたのだけれど)が、もっと早ければ、時を経て、雪解けを迎え、両親との最後の時間を、共にできたかもしれません。

 

でも、もう、遅すぎました。

両親が今の家で暮らせる時間は、長く見積もって30年…いや、25年…もしかしたら、20年。

その時間は、私がこれまで浪費してきた時間より、短いものです。

 

僅かな希望は、あります。

両親が、そして何よりも私が、お互いに適度な距離を保ちながら、時間を共にすることができる日が、もし来るのなら。

そんな、非現実的な夢を、描いて。

その前提が、そもそも成り立たないことを知っていながら。

 

心の窓を、粉々に割ったのは、私自身でしょうか。

そうしなければ、外側の形を保てなかったから、苦しさに任せて、窓を割ったのでしょうか。

 

たまたま、実家と同じ沿線に住んでいるので、時々、実家の最寄り駅を通ります。

目を閉じて、通過点……存在しなかったように。

 

タクシーで2500円で帰れる実家が、精神的には、とても遠く、遠く……

そのうち、あの家が、あるかどうかも分からなくなってしまうかもしれない。

あの家と、灯りと、そこにいるはずの、この世で一番大切な2人。

 

何処かでずっと、自分のことを責めています。

他人が何と言おうと、固い絆で結ばれていた家族。

そこから、私は逃げ出した。

固かったはずの絆を、無理やり解いて。

そうして逃げ出した先に、それ以上の価値も見出せないことを、最初から分かっていながら。

私だけ、逃げ出した………「見捨てた」

 

ふかく ふかく ふかく 水彩に揺れ動く

僕の意識は ただ

まるで まるで まるで 沈んでいくみたいに

ゆっくり 溶けだしていく

 

文章を書くこと。

魂を歌うこと。

ねぇ神様、中途半端な才能なんて、いや、興味なんて、与えないでほしかった。

形にもならない、誰にも届かない思いや旋律を、ただ一人、一人きりの部屋で、綴り、口ずさむだけなのだから。